【門脇麦】映画 「愛の渦」 感想と考察【池松壮亮】
愛の渦、という映画を観ました。
Twitterで存在を知って、エロそうだなって思ってたところ、TSUTAYAで見つけたので借りました。
まぁ、エロかったんですけど。
それ以上に色々いいな、と思った映画だったので、紹介したいと思います。
あらすじ
閑静な住宅街にあるマンションの一室、普段なら関わらないであろう個性的な男女が集まっていた。皆一様に、バスタオル1枚の姿で気まずそうに座っている。ここは六本木の裏風俗。彼らは皆、乱交パーティのために集まったのだった。
池松壮亮演じる主人公のニートや、門脇麦演じるヒロインの内気な女子大生、ガラの悪いフリーター、眼鏡のサラリーマン、童貞でデブの作業員、OL、保母さん、ピアスのやせぎす女。これらの男女が集った、乱交パーティの一夜を描いた映画です。
むき出しの性欲、暴かれる劣等感やコンプレックス、完全な理解という幻想。生々しい人間の本質をとことん味わうことができます。
そして……
123分中、洋服を着ているシーンはわずか18分30秒。
当然R18+、これは観ない訳にはいかんでしょう。
という訳で、以下ネタバレ込みの感想です。
服は脱いでも心は脱げない
全員乱交目的で集まっているので、さっさとやり始めるのかと思いきや、そうはなりません。一同黙りこくって、固まってしまいます。
お互いに、目的は分かっています。しかし、そうすんなりとは本能に素直にはなれないようです。自意識を捨てきれずに、探り合う時間が続きます。無難な会話を切り出してみたり、急に話しかけられて無視してみたり。現実ではどうなんでしょうね?
僕はこの探り合う時間が非常によかったです。もどかしさ、女性陣のためらい、男性陣の焦り。映像の空気管を、肌で感じられました。
男たちの女性へのすり寄り方がまた気持ち悪いんです。セックスはしたい。でも、拒否されるのは怖い。そういう意識が、表情や声や体動で表現されてます。それがまた生々しくてよいです。俳優さんってすごい。
女性陣が内輪で会話しはじめたあと、童貞がその会話を真似して、一番優しそうなサラリーマンに話しかけるシーンもよかったです。話しかけ方が分からず必死に他人の会話を真似する童貞。自分たちの会話を反復されて困惑する女性陣。なにアイツ気持ち悪い、という視線。漂う気まずい空気。自分のコンプレックスをガンガンに刺激されて最高でした。
とはいえ、乱交パーティなので、少し緊張の糸が解れたら、あとはゴールまで一瞬です。仲良くなったフリーターとOL、サラリーマンと保母さんはさっさとおっぱじめます。響き渡る喘ぎ声。デブ童貞は勇気を出して、ピアスの女に頼み込むと、なんとOK。黙り続けていた主人公と女子大生も、怯えながら会話を始め、互いに相手になることを決めました。
解放
で次のシーンが門脇麦の濡れ場なんですが、これがすごかったです。最大の見せ場のひとつです。
先ほどまでの内気さとはかけ離れ、セックス中の彼女は頭を揺らしながら叫ぶようによがりました。それはもはや泣き声のようにも聞こえました。普段、自分の内側に閉じこもっている彼女が、性行為を通して自らを解放させる映像は圧巻でした。なんの制限も受けない、本当に純粋な姿の彼女がそこにはいました(果たして本当にそうなのかが後に問題になるのですが)。
エゴとコンプレックス
このままスムーズに進むかと思われた乱交パーティでしたが、そう上手くいきません。皆が裸になれば、むき出しになるのは性欲だけではなかったのです。
フリーターが女子大生(2回連続でニートとやった)を次の相手に無理に指名したところから徐々に亀裂が走り、最終的には、エゴで互いのコンプレックスを抉るような罵り合いになりました。デブは童貞を根拠になじられ、仲がよかったOLと保母さんも険悪に。
そんな雰囲気の会場に、ひと組のカップルがやってきます。
セックスによる相互理解という幻想
これまたおデブな彼女と、若干ガラの悪い彼氏。彼らはスワッピング目的のようでした。
デブ彼女が相手を探し始めますが、フリーターとサラリーマンは目を逸らします。その結果、ニートがデブ彼女の相手をすることになりました。
そして、彼氏のほうも女子大生を相手にしてベッドへと向かいます。
デブ彼女に半ば犯されるようになりながら、隣で愛撫される女子大生を見つめるニート。見つめ返す女子大生。互いに別の人と性行為を行いながら、視線を交わす二人には確実に性欲以外の感情が芽生えていました。
結局、カップルの彼氏のほうが、夢中でセックスするデブ彼女になぜかキレて、2組の性行為は中断されました。
そのあと、ニートと女子大生は3回目のセックスをします。
本当の自分
そして朝になり、乱交パーティは解散になります。ルールとして、ストーカーを防ぐために、女性陣が帰ってから男性陣が帰ることになっていました。この時間が終わってしまえば、名前も知らない他人たちとは永遠にお別れです。しかし、ひょんなことから、ニートと女子大生の携帯に互いの番号が残ってしまいます。
1時間後、女子大生にカフェに呼び出されたニート。互いに本名を教えあい、ニートは彼女の名前と番号を登録しようとします。
しかし、彼女は、「あの場所の私は本当の私ではないから、その番号を消してほしい。そのためにあなたをここに呼んだ」と告げます。
唖然とするニート、理解しあえたと思っていた彼女に拒絶されたのだから当然でしょう。渋るも仕方なく番号を消去します。
背を向けた女子大生にニートは言います。「僕はあの場所の自分が本当の自分だと思っている」
それに彼女は、「いいですね」と返して去っていきました。
「あの場所の自分が本当の自分だと思っている」ニートは、あの場所で理解しあえた彼女との関係を本物で揺るぎないものだと思いました。
しかし。女子大生は、「あの場所での私は本当の自分じゃない」と考えています。よって、セックス中に通じ合えても、本当には理解しあえていない、と彼との関係を断ってしまったのでした。
二人は結局一人のまま、それぞれの日常に戻っていきました。
まとめ
えぐくて、せつなくて、たまに笑えて、なおかつ実用性まである。いい映画でした。
人間の本質が、様々な角度から明かされていく。それがとてもよかったです。
一つ難点なのは、人に勧めたくても、そう簡単には勧めにくいとこですかね笑
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