slowly

Watabera Miscellaneous Notes

人生やめてません

元同級生の風俗落ちで盛り上がっても、客にはなれない

 

「お前、ココちゃん知ってる?」

「誰」

「……いや、知らないよな」

「何なのお前」
「昨日まで旅行で××に行ってて、向こうのソープに飛び込みで行ったのよ、そこの嬢がココちゃん」
「……また風俗か」
「ココって名前の割にさ、色白くて切れ長の目だった。タイプの顔だったから最初はラッキーだと思ったんだよね」
「知らねぇよ」
「がしかし、マグロもマグロで、鳩尾殴られたような喘ぎ声というオプションつき。俺が早漏じゃなきゃイケてないな」
「……」
「結局時間余ってさ、色々話したのよ。歳とか出身とか。吃りまくるから凄い聞き取りにくかったけど」
「…………」
「歳は俺らとタメ、21。出身がお察しの通り、ここ〇〇だったてわけ」
「……察してない」
 
 
『え、じゃあ、高校も◯◯の高校だったり?』
『は、は、はい』
『そうなんだ。俺、大学が◯◯なんだよね、旅行でこっち来ててさ。△△て高校知ってる? 友達の母校がそこなの』
『わ、わわ、私も、△△出身……です』
『え!? マジで!? じゃあ、コウキって知ってる? ◇◇コウキ。ていうか、△△てかなり進学校じゃね? なんでこんなことしてんの?』
『そ、そそ、その、わわ、私、……小説家になり、たいんです』
『はぁ? 小説家? なんでまた。それこそ、大学行けば良かったじゃん』
『お、お、お家が厳しくて、しょしょしょ小説を、書きたい、って言ったら、許さないって、そんなこと、させる為に、うう、産んだんじゃない、って……そそそれで、私家を出ました』
『ふーん、で、色々あって今ここにいると』
『……はい』
『ごめん、何か悪かったな。本は売れそうなの?』
『いや……お、応募はしているんですが、なか、なか、賞は』
『だよなぁ……そりゃあ難しいよな』
『で、でも大丈夫です、私、フ、フ、ファンがいるんです』
『ファン? やるじゃん』
『はい、その人が応援してくれるので……』
『そっか、じゃあ俺も応援するよ、頑張ってくれ』
 
 
「……ってさ。知ってる? ココってのは源氏名だけど」
「知らない」
「残念、××に行ったら是非探してみてくれ」
「嫌だよお前と兄弟なんて」
「おいおい、口が悪いなコウキくん」
「……死んでくれ」
 
 
『凄い、凄いよ仲道さん。こんな綺麗な文章が書けるなんて』
『ほ、ほほ、本当ですか。ああ、ありがとうございます。う、う、嬉しいです』
『細かな言葉の選択が好きだ。仲道さん、小説家になれるよ。俺、応援する』
『そ、そうなんですか……小説家』
『うん、また書けたら見せてよ!』
 
『どど、どうですか……』
『やっぱり展開が弱いかな。仲道さんは語彙力は十分なんだし、プロットをもっと練ってもいいかと思う』
『わかり、ました。頑張ってみます』
『良かったら、俺にも手伝わせてよ。人物の設定を突き詰めるのとかは仲道さんには敵わない。だけど、大きな流れのアイデアとかは俺でも役に立つかもしれないし』
『うわぁ、うれしいです。よよ、よろしくお願いします』
 
『やっぱり日記を書いてたのは、既に出て来た人の方がいいと思う。王道だけどインパクトはある』
『た、たしかに』
『それでもう一回人物関係詰めようか。手間かけさせてごめんね』
『い、いえ、あ、ありがとうございます』
 
『これに応募してみよっか』
『だ、だただ大丈夫なんでしょうか。到底、え、選ばれるとは……』
『いや、自信が出来るまで待ってちゃ勿体ない。それに有理ちゃんの文章、俺が思う限りプロとでも勝負出来るよ』
『あ、あ、ありがとう、弘樹くん』
 
『こ、こ、弘樹くん!!! か、かかかか、かか、佳、ささ、作ででででです!!!!!』
『やった!!!やったな、有理ちゃん!!!!』
『ほほほ、本当にあ、ありがとう。ありがとう……こ、弘樹くんのおかげです……』
『何言ってるの! 実力だよ、有理ちゃん……いや、小林細言の!』
『恥ずかしいです……こ、こ、弘樹くんにそう呼ばれると……』
『自分のペンネームでしょ、今後は使う機会も増えるんだから』
『は、はい……こ、弘樹くん、私、頑張ります。しょしょしょ、小説家になります……!!』
 
「コウキ、おいコウキ」
「あ、すまん」
「凄い渋い顔してたぞ。嫌なことでも思い出したか?」
「……別に」
 
『こ、こ、ここここ、こ、弘樹くん……あ、あ、ああ、あの、ごめんなさい、ごごご、ごめんなさい、ごめんなさい、ご、ごめんなさい』
『何、何、どうしたの。落ち着いて有理ちゃん。何があったのかゆっくり話して』
『お、お、お、お、お、お母さんに、か、か、書いてるのが、みみ見つかって、データをぜぜぜ全部、パソコンごととと捨てられま、まま、ました………ごめんなさいごめんなさいごめんなさい』
『落ち着いて、落ち着いて。消されたらもう一回書けばいいよ。前よりよく練られていいのが書けるって。紙の資料は?』
『手書きの紙のも、いい、印刷した紙も、全部捨てら、らられました……。いいから、べ、勉強しろって……こんなんじゃい、医者にななれない……って……』
『…………』
『わ、わわ、私、いい、医者になんてなりたくないって、本を書きたいって、い、言ったら、お母さん、す、す、凄く怒って……に、二度と、言うな……って、つ、次見つけ、た、たら……家からお、お、お、お、追い出す……って』
『……』
『で、でも、こ、こ、こ、弘樹くん、私、書きたい……です、そ、そ、そんなの、い、い、い、嫌……い、や……』
『有理ちゃん……』
 
『こ、こ、弘樹くん。き、来てくれてありがとう』
『有理ちゃん、その荷物……』
『わ、私、い、家を出ます。弘樹くんが、い、いないと上手く、お話、作れないかもしれないけ、けど。そ、それでも、物書き出来ないよりは、書いて、い、いたいです』
『無茶だよ……。有理ちゃんが一人で生活するなんて。部屋は? 仕事は? 携帯は? 誰も何も助けてくれないよ?』
『じゃあ、弘樹くんは何もしてくれないの!?』
『い、いや、それは……』
『あ、……ご、ご、ごめんなさい。弘樹くんは、何も、悪くないです……。でも、やっぱり、わ、私、今の生活、嫌なんです。こ、これは、多分、私の、人生じゃ、ないです……』
『……』
『最後に、会えて、良かったです。弘樹くんは、い、今でも、私を応援してくれますか、?』
『あ、当たり前だよ。でも、それはまた別の……』
『嬉しいです。え、え、えっと……さよなら、ま、ま、ま、また、ね』
『………………』
 
 


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