slowly

Watabera Miscellaneous Notes

人生やめてません

ユニコーンと麒麟とワンカップ大関

 

 ラーメンを食べた帰りに、ジュースでも買おうとサークルKに寄った。

 

 スナックコーナーを眺めていたら、初老のおっさんが同じ列に入ってきた。

 

 おっさんは、よれよれのTシャツに半パンで、左手にくしゃくしゃの千円札を握っていた。

 

 おっさんは、スナックコーナーの向かいの酒棚を一瞥すると、ワンカップ大関をむんずと掴んで立ち去った。

 

 僕はぽつんとそれを見つめていた。一瞬経ってから、自分が感動していると気づいた。

 

 なんどか味わった種類の感動だと思ったが、それがなんだったかすぐには分からなかった。

 

 レジでTカードを財布から出したときに、やっと思い出した。

 

 白川郷だ。白川郷を見たときと同じ感動だ。

 

 白川郷は、岐阜県の合掌造りが有名な集落である。その独特の景観によって、1995年に世界遺産となった。

 

 しかし、僕にとっては白川郷世界遺産よりも大きな意味があった。

 

 白川郷は、"雛見沢"なのである。

 

 雛見沢とは、竜騎士07原作のノベルゲーム「ひぐらしのなく頃に」の舞台の村だ。

 

 僕は、中学校の頃「ひぐらし」に大ハマりしていた。雛見沢は2次元のなかでは馴染み深い、しかし現実では到達できない場所だった。

 

 大学に入ってからようやく白川郷に行く機会があった。そこには、まさに雛見沢が存在していた。僕はアニメで観たそのままの光景に心を奪われた。

 

 話のコンビニのおっさんに戻す。

 

 よれよれのおっさんがワンカップ大関を掴むのを見たとき、僕は白川郷を訪れた日を思い出した。

 

 雛見沢と、ワンカップ大関のおっさんは同じだった。

 

 ワンカップ大関を買うよれよれのおっさんは、僕にとってある意味フィクション上の存在だった。漫画や小説とかではよく登場するけれど、実際に見たことはなかった。

 

 だから、おっさんを観たとき、アニメの聖地に訪れたときのような、ずっと応援していたバンドを始めて生で観たような、そんな感覚だった。ちょうど僕は漫画の世界に入り込んだようであった。

 

 現実問題、昼からワンカップ大関を飲んでいるおっさんなんて、いくらでもいるだろう。僕の場合はたまたま今まで会わなかっただけだ。それでも、僕にとってそのおっさんは、フィクションの香りがしていた。

 

 差別的なニュアンスが、その感性のなかにあるかもしれないのは否定しきれない。しかし、その邂逅は僕にとっては鮮やかな衝撃だった。

 

 よれよれのTシャツ、くしゃくしゃの千円札、ワンカップ大関。おかげで非日常的な体験ができた。サンキューおっさん。

 

(不快な思いをされた方は申し訳ない)

 

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