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Watabera Miscellaneous Notes

人生やめてません

【二次創作】歌詞SS「羽虫と自販機」【KANA-BOON】

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「世界中に私たち二人だけだったらさ、いいと思わない?」


「え?」

 君の発言は、あまりにも突拍子もなかった。だから、僕は思わず聞き返した。

「だから……世界に私たちだけしかいなかったらいいのに、って」

「……」

 僕は黙っていた。タバコの燃え殻がベランダに落ちた。

「なんとか言ってよ。恥ずかしいじゃん」

「無理だよ」

「え?」
 
 今度は、君が聞き返した。

「世界に二人しかいなかったら生活していけないって。死んじゃうよ」

 僕は笑った。"笑う"ように笑った。

 

 タバコの火を手すりで消して、僕は室内に戻った。

「……」

 タバコを吸ってる訳でもないのに、君はなかなか部屋に戻ってこなかった。

 こんな風に、付き合ってる間、僕はいつだって素直になれなかった。

 




 ある日、僕はTSUTAYAで借りてきた映画を観ていた。

 画面のなかで、サミュエル・L・ジャクソンカート・ラッセルが馬車に乗り合わせていた。

 君が僕の顔を覗き込んできた。

「ねぇ、今度の週末って、バイトもライブも入ってない?」

「…………」

 カート・ラッセルが連れの女の顔を殴った。

「このまえ言ってたドーナツ屋さん、行きたいんだけど」

 

 サミュエル・L・ジャクソンがニヤついた。

「…………」

「ちょっと、ねぇ、聞いてるの?」

 君が僕の肩を掴んで揺らした。あぁ、画面が見づらいじゃないか。

「うるさい」

「え……」


「うるさいって言ってんだろ!!こっちは映画観てんだよ!!話しかけてくんな!!そんくらい分かれよ!!」

 君の瞳孔が一瞬縮んだ。そして、また一瞬で大きく広がった。

「……なによ、そんなに言わなくていいでしょ!!別にリモコンで一時停止だってできるのに!!どれだけ、私のこと無視するの!?」

「俺の金で俺が借りた映画を観てんだよ!!なんで邪魔されなきゃいけないんだ!!」

「なにそれ、信じられない!!有くんがそんな思いやりのない人だなんて、思わなかった!!もう知らない!!」

 君はテーブルのうえのリモコンを掴むと、僕めがけて投げつけてきた。超近距離で放たれたソレは、僕の右後頭部に激突した。普通に、すごく痛かった。

 そして、君はスラッシャーのリュックを掴んで部屋から出て行った。君があまりにも床を鳴らすから、あとで苦情くるかもしれない。なんて、僕はぼんやりと考えていた。

 いつまにか映画のシーンは変わっていて、カート・ラッセルが馬車から雪原に投げ出されていた。

 



 6畳の部屋で、君と僕は別れ話をしていた。

 君と別れるなんて想像もつかなかった。しかし同時に、いつかこの日が来るような気もしていた。

 あの頃、君はよく取り乱してたけど、この日はやけに冷静だった。だから、僕と淡々と君と会話した。

 あっという間に別れ話はまとまった。君は、ほっとしていたように見えた。僕は、あまりの呆気なさにショックを覚えた。というよりも、ショックを受けている自分を発見した。

 君が呟いた。

「喧嘩ばっかりだったね」

 喧嘩。その頃の僕は、もう、なにが喧嘩でなにが会話なのかも、分かっていなかった。日常のすべてが喧嘩だったような気もするし、逆にしばらく喧嘩らしい喧嘩をしていないような気もした。

「そうかな。最後に喧嘩したのっていつだった?」

「…………今」

 あぁ、そこまで僕らはすれ違っていたんだ。

 彼女は桃色のキャリーバッグに、この部屋で彼女を象徴するもの全てを入れて、永遠に出ていった。

 テーブルに置かれた合鍵を見つめていて気づいた。

 

 僕らは世界中に二人だけではなかったのだ。

 



 また君のことを考えていた。いつまで引きずるのか、自分でも嫌になる。

 君との思い出脳内テープをループさせて、正しい選択肢探しに耽ってしまう。今更なんの意味もないのに。あの時は正しい選択肢なんて考えもしなかったのに。

 いつの間にか、僕の世界を構成する骨組みが君の存在で出来ていた。僕の生活のすべてに、君は薄くも濃くも存在していた。別れて年月が経った今でもそれは変わらなかったし、変えられなかった。

 君のことは、もう忘れてしまいたい。過去のかけらにしがみついても意味がない、と分かっている。

 だけど、もし君のことを忘れたら、もう歌を歌えなくなる気がする

 

 君を忘れた僕の口から出たそれは、まるで歌のように聴こえる。けれど、本質的には全く歌ではなくて、僕という存在がまったく介入しない波でしかない。

 君を忘れたら、もう歌を歌えなくなる気がする。そんな気がする。

 だから、今日も君を歌おうと思う。

 

 君の実在が生活になくたって構わない。僕は今日も明日も、いつまでも、君を歌うのだ。

 

 微笑まない自販機の光に群がる羽虫のように、夜の帳が降りた生活のなかで僕は歌うのだ。

 

 

 

 

 

 今更言うのアレだけど、世界中に二人だけならばって、僕も思ってたんだよ。 
 
 
 

 

羽虫と自販機

羽虫と自販機

 

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【ビョーク】映画 ダンサー・イン・ザ・ダーク 感想【ミュージカル】

 

 ダンサー・イン・ザ・ダークを観ました。

 


映画「ダンサー・イン・ザ・ダーク」日本版劇場予告

 

 

 

 

3大鬱エンド映画のひとつ

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 『ミスト』や『セブン』と並んで、鬱エンド映画として有名です。

 

 まぁ評判に違わぬ悲しい終幕で、恥ずかしながら涙を流して嗚咽してしまいました。

 

 けれど、ただ悲しいだけではなくて、悲劇のなかにも救いがあります。悲しみも救いもひっくるめてとてもよかったです。

 

 マツコ・デラックスの人生を変えた映画のひとつらしく、ラジオで紹介しています。

 


マツコデラックスと伊集院光のおすすめ映画

 

 

主演はアイスランドの歌姫、ビョーク

 

 この映画の主人公セルマを演じるのは、アイスランドの女性歌手、ビョークです。

 

 僕は全く知らなかったのですが、世界的に有名な方らしく、グラミー賞を何度も獲っているのだとか。

 

1overf-noise.com

 

 

 エモい。

 

 映画本編でも、ビョークの歌唱力は存分に活かされています。

 

 

あらすじ

チェコからの移民でシングルマザーのセルマは、工場で働きながら息子のジーンを養っていた。生活は貧しくても、セルマにはよい友人たちがおり、趣味のミュージカルに取り組みながら、楽しい日々を送っていた。しかし、実はセルマは重大な病気で視力が低下しつつあり、今年中に失明してしまうほど病状が悪かった。さらに、セルマの病気は遺伝性であり、息子のジーンもやがては失明する運命にあった。セルマは、工場と内職で得た賃金を、ジーンの手術代として必死で貯蓄していた。そんななか、彼女の希望を打ち砕く事件が起きてしまう。 

 

 

 ひたすらに続く理不尽のなかで、母親がただ息子のことだけを想い、生きていくストーリーです。

 

 視力の病気というだけで、次から次へとセルマに不幸が襲いかかります。物事がどんどん悪いほうへ転がっていくので、正直観るのがつらいです。

 

 ただ、連続する圧倒的な不幸のなかで息子への愛を抱き続けるセルマの姿があればこそ、この映画を観た人の心は(良くも悪くも)大きく動かされるのです。

 

 ちなみに、人によっては拒否反応が激しく、「最悪の映画だ!!」となる人もいるらしいので、注意が必要です。しかし、人生で観たなかで大きな存在感を示す映画になのは間違いないでしょう。

 

 未視聴の方はぜひ観てみてください。以下、ネタバレ込みの感想です。

 

セルマを襲う理不尽

ある日、低下した視力とミュージカルの空想をする癖のせいで、セルマは事故を起こして工場をクビになってしまう。仕方なく、すでに溜まった費用で息子の手術を依頼しようとするが、帰宅すると隠していた貯金がなくなっていた。セルマは貯蓄のことを唯一教えていた大家のビルのもとへと向かった。しかし、ビルによってセルマは盗人に仕立て上げられ、通報されてしまう。さらに、お金を返さないビルに手をかけざるを得ない状況になり殺してしまう。なんとかお金を医者に預け、手術の予約をしたセルマだったが、結局捕まってしまう。セルマは、息子になんとしてでも手術を受けさせるため、裁判で本当のことが言えない状況にあった(医者に預けた手術費用を取り上げられる可能性があった)。また、ビルが妻に隠し事をしていたことを秘密にするために、ビルの行為についても断片的なことしか言わなかった。そんな状況で、国選弁護士しかついていないセルマは、検察のいいようにされてしまう。そして、最終的にセルマに下った判決は、死刑だった。 

 

 息子を想い続け、さらに他人にも思いやりを持ってしまったせいで、セルマの状況はどんどん悪くなっていきます。

 

 観ている側としては「もう少し自分勝手になってもいいのに!!」と中盤以降非常にもどかしい思いをします。

 

 セルマの自己犠牲の態度がけっこうかたくななので、この映画が苦手な人はそこがダメなのかも。

 

 息子のために自分を犠牲にして不幸の坂を転がり落ちていくセルマ。なにに対してかも分からない、悲しみとも怒りともつかない感情を覚えました。

 

 

ミュージカル要素 

 

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 そんなセルマの唯一の娯楽がミュージカルでした。

 

 劇団の練習に参加する一方で、日常の雑音からリズムを感じてその場を舞台にしたミュージカルを空想していました。

 

 そのため、この映画ではミュージカルシーンが多数挟まれています。ビョーク自慢の歌声もここで披露されています。

 

 ミュージカルシーンはほとんどがセルマの妄想なので、現実ではありません。最初急に工場の職員たちが踊り始めたときはびっくりしました。

 

 このミュージカルシーン、制作側からしたらかなりの推しポイントみたいなのですが、個人的にはそこまで好きではなかったです。「いいから早く話進めて!!」とか思ってました(よくない癖です)。

 

 ただラスト3つ(”最後から2番目の歌”から前3つ)のミュージカルは、現実の追い詰められた状況と妄想の幸せな様子のギャップがよかったです。ミュージカルシーンが終わった瞬間にどうしようもない現実に引き戻される感覚は、悲痛そのものでした。

 

 

そして、最後から2番目の歌へ

裁判の後、友人のジェフは、セルマがジーンのために貯金していたことをつきとめた。この事実があれば減刑されるはずであった。そこで、親友のキャシーは裁判所に再審請求し、優秀な弁護士をつけようとした。しかし、セルマはその弁護士を雇う費用がジーンの手術費から出ていることに気づき、再審請求をやめて死刑を受け入れてしまう。とうとう絞首台に乗せられたセルマだったが、死への恐怖から取り乱し、ジーンの名前を呼んで泣き叫んでしまう。刑の執行を見届けに来ていたキャシーは、警備を振り切り、セルマにジーンの眼鏡を渡した。ジーンの手術は成功した(眼鏡が不要になった)のだった。それを知ったセルマは落ち着きを取り戻し、"最後から2番目の歌"を歌い始める。しかし、歌の途中で刑が執行されると、床が開く音と同時に身体が投げ出され、セルマの歌声は途切れた。

 

 この、”最後から2番目の歌”というのは、昔セルマがミュージカルを見に行っていたころに、ミュージカルの終わりを見るが嫌で最後から2番目の曲で帰っていた、というエピソードからきています。セルマは、最後の曲を観なければ自分のなかでミュージカルは永遠に続くのだ、と言っていました。

 

 死刑が執行され自分の命は終わってしまうが、この歌は最後の歌ではない。自分が終わらせない限り、私と私の息子のミュージカルは続く。それが最後から2番目の歌でした。

 

 自分の死が目前なのに、ジーンの目を治すことができた喜びでいっぱいで幸せそうに歌うセルマ。ずっと理不尽続きだった彼女へ最後に訪れた幸運に僕もひたすら共感して、よかったよかった……と泣いていました。

 

 だからこそ、ガコン!!と鳴った瞬間、セルマの歌が途切れて沈黙が訪れたあとは、さらに涙が止まらなくなりました。直前まで彼女が幸せそうだったにしろ、実際に彼女の死という現実的を突きつけられると、やはりその理不尽と不幸を再確認して泣く以外にどうしようもなかったです。

 

 最後の彼女は救われていたし、彼女の一途な母性愛は美しい。けれど、やはりこんな理不尽があっていいのだろうか、という悲しさに襲われてしまう。そんなエンディングでした。

 

 

まとめ

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 息子のため、まさに盲目に走り続ける母親が、理不尽にあい、最終的に自分の命を奪われてしまう。しかし、本来の目的を達成した彼女の心は救われていた。

 (けれど、観ている側からしたら全然救われない)

 

 ダンサー・イン・ザ・ダークはそんな映画です。

 

 最後にもうひとつだけ好きな部分を挙げます。

 

 死刑が決まったあとに、捕まっているセルマに友人ジェフが会いにきます。そのやり取りのなかでジェフは、遺伝すると分かっていて何故ジーンを産んだのだ、と聞くシーンがあります。

 

 セルマはすこし微笑みながら、この手に赤ちゃんを抱きたかったの、と答えます。

 

 セルマの人生最大の我が儘は、息子を産んだことだったのでしょう。その代償にセルマは自分の命を落とすことになってしまいました。

 

 けれども、息子と過ごした時間は、その代償以上の幸せを彼女に与えたことでしょう。

 

 プラスな側面から彼女の息子愛が確認できるこのシーンがとても好きです。

 

 (それを踏まえてもあの結末は悲しすぎる……)

 

 

 

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【門脇麦】映画 「愛の渦」 感想と考察【池松壮亮】

 

 愛の渦、という映画を観ました。

 

 


映画「愛の渦」予告編

 

 Twitterで存在を知って、エロそうだなって思ってたところ、TSUTAYAで見つけたので借りました。

 

 まぁ、エロかったんですけど。

 

 それ以上に色々いいな、と思った映画だったので、紹介したいと思います。

 

あらすじ

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閑静な住宅街にあるマンションの一室、普段なら関わらないであろう個性的な男女が集まっていた。皆一様に、バスタオル1枚の姿で気まずそうに座っている。ここは六本木の裏風俗。彼らは皆、乱交パーティのために集まったのだった。

 

 池松壮亮演じる主人公のニートや、門脇麦演じるヒロインの内気な女子大生、ガラの悪いフリーター、眼鏡のサラリーマン、童貞でデブの作業員、OL、保母さん、ピアスのやせぎす女。これらの男女が集った、乱交パーティの一夜を描いた映画です。

 

 むき出しの性欲、暴かれる劣等感やコンプレックス、完全な理解という幻想。生々しい人間の本質をとことん味わうことができます。

 

 そして……

 

 123分中、洋服を着ているシーンはわずか18分30秒。

 

 当然R18+、これは観ない訳にはいかんでしょう。

 

 という訳で、以下ネタバレ込みの感想です。

 

服は脱いでも心は脱げない

 全員乱交目的で集まっているので、さっさとやり始めるのかと思いきや、そうはなりません。一同黙りこくって、固まってしまいます。

 

 お互いに、目的は分かっています。しかし、そうすんなりとは本能に素直にはなれないようです。自意識を捨てきれずに、探り合う時間が続きます。無難な会話を切り出してみたり、急に話しかけられて無視してみたり。現実ではどうなんでしょうね?

 

 僕はこの探り合う時間が非常によかったです。もどかしさ、女性陣のためらい、男性陣の焦り。映像の空気管を、肌で感じられました。

 

 男たちの女性へのすり寄り方がまた気持ち悪いんです。セックスはしたい。でも、拒否されるのは怖い。そういう意識が、表情や声や体動で表現されてます。それがまた生々しくてよいです。俳優さんってすごい。

 

 女性陣が内輪で会話しはじめたあと、童貞がその会話を真似して、一番優しそうなサラリーマンに話しかけるシーンもよかったです。話しかけ方が分からず必死に他人の会話を真似する童貞。自分たちの会話を反復されて困惑する女性陣。なにアイツ気持ち悪い、という視線。漂う気まずい空気。自分のコンプレックスをガンガンに刺激されて最高でした。

 

 とはいえ、乱交パーティなので、少し緊張の糸が解れたら、あとはゴールまで一瞬です。仲良くなったフリーターとOL、サラリーマンと保母さんはさっさとおっぱじめます。響き渡る喘ぎ声。デブ童貞は勇気を出して、ピアスの女に頼み込むと、なんとOK。黙り続けていた主人公と女子大生も、怯えながら会話を始め、互いに相手になることを決めました。

 

 

解放

 で次のシーンが門脇麦の濡れ場なんですが、これがすごかったです。最大の見せ場のひとつです。

 

 先ほどまでの内気さとはかけ離れ、セックス中の彼女は頭を揺らしながら叫ぶようによがりました。それはもはや泣き声のようにも聞こえました。普段、自分の内側に閉じこもっている彼女が、性行為を通して自らを解放させる映像は圧巻でした。なんの制限も受けない、本当に純粋な姿の彼女がそこにはいました(果たして本当にそうなのかが後に問題になるのですが)。

 

 

エゴとコンプレックス

 このままスムーズに進むかと思われた乱交パーティでしたが、そう上手くいきません。皆が裸になれば、むき出しになるのは性欲だけではなかったのです。

 

 フリーターが女子大生(2回連続でニートとやった)を次の相手に無理に指名したところから徐々に亀裂が走り、最終的には、エゴで互いのコンプレックスを抉るような罵り合いになりました。デブは童貞を根拠になじられ、仲がよかったOLと保母さんも険悪に。

 

 そんな雰囲気の会場に、ひと組のカップルがやってきます。

 

セックスによる相互理解という幻想

 これまたおデブな彼女と、若干ガラの悪い彼氏。彼らはスワッピング目的のようでした。

 

 デブ彼女が相手を探し始めますが、フリーターとサラリーマンは目を逸らします。その結果、ニートがデブ彼女の相手をすることになりました。

 

 そして、彼氏のほうも女子大生を相手にしてベッドへと向かいます。

 

 デブ彼女に半ば犯されるようになりながら、隣で愛撫される女子大生を見つめるニート。見つめ返す女子大生。互いに別の人と性行為を行いながら、視線を交わす二人には確実に性欲以外の感情が芽生えていました。

 

 結局、カップルの彼氏のほうが、夢中でセックスするデブ彼女になぜかキレて、2組の性行為は中断されました。

 

 そのあと、ニートと女子大生は3回目のセックスをします。

 

本当の自分

 そして朝になり、乱交パーティは解散になります。ルールとして、ストーカーを防ぐために、女性陣が帰ってから男性陣が帰ることになっていました。この時間が終わってしまえば、名前も知らない他人たちとは永遠にお別れです。しかし、ひょんなことから、ニートと女子大生の携帯に互いの番号が残ってしまいます。

 

 1時間後、女子大生にカフェに呼び出されたニート。互いに本名を教えあい、ニートは彼女の名前と番号を登録しようとします。

 

 しかし、彼女は、「あの場所の私は本当の私ではないから、その番号を消してほしい。そのためにあなたをここに呼んだ」と告げます。

 

 唖然とするニート、理解しあえたと思っていた彼女に拒絶されたのだから当然でしょう。渋るも仕方なく番号を消去します。

 

 背を向けた女子大生にニートは言います。「僕はあの場所の自分が本当の自分だと思っている」

 

 それに彼女は、「いいですね」と返して去っていきました。

 

 「あの場所の自分が本当の自分だと思っている」ニートは、あの場所で理解しあえた彼女との関係を本物で揺るぎないものだと思いました。

 

 しかし。女子大生は、「あの場所での私は本当の自分じゃない」と考えています。よって、セックス中に通じ合えても、本当には理解しあえていない、と彼との関係を断ってしまったのでした。

 

 二人は結局一人のまま、それぞれの日常に戻っていきました。

 

 

 まとめ

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 えぐくて、せつなくて、たまに笑えて、なおかつ実用性まである。いい映画でした。

 

 人間の本質が、様々な角度から明かされていく。それがとてもよかったです。

 

 一つ難点なのは、人に勧めたくても、そう簡単には勧めにくいとこですかね笑

 

 

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字が汚い奴は、気も利かない

 

「あなたって、字が汚いのね」

 

 彼女が、頭のなかの文章を諳んじるのやめて、そう呟いた。

 

 彼女の目線は、僕の手元に注がれていた。原稿用紙には、僕の多動的な字で、さっき彼女の頭から溢れた言葉が羅列してあった。改めて見ると、それはたしかにお世辞にも上手い字とは言いがたかった。

 

「あぁ……うん。このパラダイムでは」

 

「インクミミズ職人が評価される世の中に期待するのね、馬鹿げてるわ」

 

「もういいから、はやく続きを頼むよ」

 

「…………止まっちゃった」

 

 彼女は、左の人差し指で自分の頭を小突いた。コンコン。そして、にっこりと口角を歪めた。

 

 どうやら、本当にもう出てこないらしい。自分の字が汚かったせいで、僕は貴重な欠片を手に入れ損ねた。今この時間の欠片は、今この時間にしか存在しないのだ。僕は永遠にそれを失った。

 

「初めて自分の字の汚さを恨むよ」

 

「初めて?」

 

「そうとも」

 

「あなたって野蛮な人なのね」

 

「どこが野蛮だ、社会の枠の外で自活する君のほうがよっぽど野蛮だよ」

 

 彼女は、僕の反論を無視して続けた。彼女の目線は、窓の景色のそのまた向こうにあった。

 

「他人に意味を伝えようとするのに、使うのがそのインクミミズでしょ。不躾すぎると思わない?」

 

「いやいや、他人に書類を書くなら丁寧に字を書くよ。もちろん、少しぎごちない字にはなるけどさ」

 

「上手く書けないって分かってるのに、変わろうとしないのね」

 

「そう言われたら、そうなるけども」

 

「ほら、野蛮で傲慢だわ!他人が不便を被るとしても改善しないのでしょう!あなたの地球にはあなたしか住んでないのかしらね」

 

 彼女の黒いスカートのレースが揺れた。

 

「おいおい、言いすぎだろ。それは拡大解釈だ」

 

「本当にそうかしら。あなたの言葉ってよくエゴが透けて見えてるわよ」

 

「どういうことだ」

 

 彼女は嘲るように見下すように、それでいて自分の正しさを疑っていない目をしていた。

 

「そのままの意味よ。そもそも、あなた自分の字読めるの?」

 

「……そりゃたまには読めないこともあるさ」

 

「ふふふ、最高。身勝手は最終的に自分の身を滅ぼすってこと!よく勉強になるわ」

 

 デスクが揺れた。僕が叩いたのだった。

 

「さっきから何様のつもりだ!誰が君の言葉を金に換えてると思ってるんだ!」

 

 カップが倒れてコーヒーがこぼれていた。僕はそれを放っておいた。彼女は見やりもしなかった。

 

「その金に換わる言葉、誰があなたに渡してあげてるのかしら」

 

「……」

 

「ごめんなさい、言いすぎたわ」

 

「……」

 

「そろそろ、帰っていいかしら。今日は多分もう何も出てこないから」

 

「あぁ」

 

 僕が目をあげたとき、すでに彼女は背を向けていた。鞄ひとつ持たない彼女は、その事実以上に身軽に見えた。

 

 僕は、なにか言おうと口を開こうとしたが、すぐに閉じた。今まさに口からエゴで出来たミミズが飛び出そうとしていた。僕はそれを必死にとめた。

 

 しかし、吐しゃ物が出口を求めて口腔をいっぱいにするように、エゴミミズは口中に広がって蠢いて、唇からにゅるりと這いずり出た。

 

「さっきのこと、僕は別に気にしてないから」

 

「………………また来てくれ、って?」

 

 なんて嫌な女なんだろうか。

 

 

ってことが最近あったので、字は綺麗に書こうと思います。

 

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オタク男子が女子に告白して成功するための会話7選!!

「君が好きだ、付き合ってくれ」

「気持ちは受けとっておくわ、でも、ごめんなさい」

「……そうか、わかった。でも最期にひとつ教えてほしいんだ。僕のどこがダメだったんだろうか?」

「そういう風に、いつも自分の出来ばかり考えてるとこ、かしらね」

 

 

「私、いつも、さみしい」

「僕はそんな思いさせない。君が好きだ、付き合って欲しい」

「ごめんなさい」

「……どうして」

「私なんか好くような人には、私のさみしさは埋められないの」

 

 

「愛してる」

「言葉の形だけ整えて、自分の曖昧な気持ちを補強して誤魔化さないでよ。あなたの為の誰かになる気はないわ」

 

「君を一生幸せにする」

「誰かを幸せにする自分になろうとしないで。私を、幸せにしようとして」

 

 

「ねぇ」

「うん」

「大好き」

「……あのさ、私の承認を買うために、君の承認を押し売りするのはやめてよ」

 

 

「好きって言ったらどうする?」

「私の答えがないと告げられない程度の好意ですり寄ってくるなんて、馬鹿するのも大概にしてほしい、と思いますかね」

 

 

「好きです、付き合ってください」

「ごめんなさい……あなたやさしいから」

「……やさしかったら、ダメなんですか」

「私を傷つける勇気のない人は、私を傷つけてまで本当に向き合ってはくれないもの」

 

 

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ハッカ飴が嫌いじゃなくなった。


ハッカ飴が嫌いだった。

 

飯屋のレジに置かれている、無料のハッカ飴。白地に青いストライプの包み。以前なら、それらを手にとることはなかった。まったく欲しくなかった。

 

小学生のとき、だれか大人からもらったハッカ飴を、一度だけ舐めた。
飴ではない味が、舌から鼻へと突き抜けた。嫌な味だった。小さな飴玉に裏切られたような気がした。
それ以来、ハッカ飴を舐めたことはなかった。

 


今日、焼き肉屋で昼飯を食べた。長財布を弄りながら向かったレジには、フルーツ飴に紛れてハッカ飴があった。

白い包みを見て、僕はハッカ飴の味を想像した。どういうわけだか、意外と悪くなさそうな気がした。
驚いた。10数年来、ハッカ飴は僕の嫌いなものリストから出ていった試しがなかったのだ。
受けとったレシートをそのままカゴに捨て、僕はハッカ飴の包みを破いた。口に入れてみる。

やっぱり、悪くない。嫌いじゃない。

舌から伝わる清涼感はけっして昔のように不快ではなかった。

 

ハッカ飴が嫌いじゃなくなった。

 

僕は、飴玉と一緒に、その事実をゆっくり味わった。なぜだか、じんわりうれしかった。
同じような毎日を送って、似たような失敗ばかり繰り返しても、僕はすこしずつ変わっていたのだ。

飴玉ひとつで、僕の日々が肯定されたような気がした。

 

ハッカ飴は口のなかで溶けてしまった。
僕はまた、日々に向き合わないといけない。
けれど、それはすこしだけ違った景色に見えた。

 

 

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なにが寂しくて、いつも飲み会の最期まで、あなたは、私は

 

心の欠落を誰かに埋めて欲しくて、飲み会にいつまでもいるのでしょう?

 

自分でその穴埋めもしないくせに、誰か他人にやらせようなんて烏滸がましいね。

 

だからあなたの自尊心の欠落は、いつまでも埋まらないのでしょう。

 

自分への承認欲しさに他人に承認を与えるひとを探して、そしてその人に甘えるのは止した方がいい。

 

それは上手くいこうが、いかまいがあなたになにかをもたらすことはない。

 

だから、酔いでプリミティブな状態に近い人から承認を得ようとするのはやめなさい。

 

愚か。あまりにも愚か。

 

けれども。

 

 

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